照屋華子・岡田恵子著『ロジカル・シンキング』|書籍レビュー

照屋華子・岡田恵子著『ロジカル・シンキング』の表紙

文章を書くうえで、意識するべきなのはロジックです。
ロジックの弱い文章では、自分のメッセージを相手に正しく伝えることができません。

加えて、WEBライティングやビジネス文書の場合は、メッセージを素早く伝える工夫も必要となります。

そこで役立つのが、ロジカル・シンキングです。
ロジカル・シンキングとは、結論を頂点に配置した枠組みを使ってロジックを整理する手法を指します。
体系だった枠組みで応用が利き、覚えることは少なく、誰もが納得できる根拠と結論を明確に伝えられます。

この記事では、照屋華子(てるや・はなこ)先生・岡田恵子(おかだ・けいこ)先生の共同著書、『ロジカル・シンキング』(東洋経済新報社)をご紹介いたします。

狙った成果を上げるための技術書

照屋華子先生・岡田恵子先生は、ともに大手経営コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー出身です。
クライアントの経営課題を解決するために、提言を論理的にまとめ、納得してもらい、実行の意思決定まで導くといった仕事をなさっていました。

クライアントである百戦錬磨の経営陣に対する提言ともなれば、ロジックに穴があってはなりません。
さらに、クライアントの種類や課題は多岐にわたるため、場当たり的に提言をまとめるのでは時間が足りなくなってしまいます。

そのようなシビアな仕事を確実にこなす手法としてマッキンゼー・アンド・カンパニー内で確立していったのが、『ロジカル・シンキング』(以下、本書)にまとめられた内容です。

本書はA5判の書籍で、232ページあります。
発行されたのは2001年とだいぶ昔ですが、時代に左右されない普遍的な内容であるため一切問題ありません。

基本的な構成は、以下の通りです。

第1部 書いたり話したりする前に
第1章 相手に「伝える」ということ 課題(テーマ)と相手に期待する反応を事前に確認する
第2章 説得力のない「答え」に共通する欠陥 話に「重複・漏れ・ずれ」や「飛び」があってはならない
第2部 論理的に思考を整理する技術
第3章 重複・漏れ・ずれを防ぐ MECEとグルーピングの技術を活用して情報を整理する
第4章 話の飛びをなくす So What?/Why So?で結論と根拠・方法の関係を整理する
第3部 論理的に構成する技術
第5章 So What?/Why So?とMECEで「論理」を作る 課題に対する結論を頂点にした論理構造を構築する
第6章 論理パターンをマスターする 並列型と解説型の使い分け・組み合わせで論理は作れる
第7章 論理パターンを使いこなす 並列型と解説型で作られる論理構成の実例について紹介

全体的には、「目標の再確認(第1部)⇒情報・思考の整理術(第2部)⇒論理の組み立て(第3部)」の3段構成になっています。
本書のメインといえるのは、第3・4章(第2部)、第5章(第3部)でまとめられている技術的な話でしょう。

ですが、一番大切な部分は、実は第1部の第1章に書かれています。
「課題(テーマ)」と「相手に期待する反応」の2点を無視して構築したロジックは、狙った成果を生み出さないからです。

ここから分かるように、本書は狙った成果を上げることに主眼を置いたコミュニケーションの技術書であるといえます。

論理的に思考を整理して構成する技術を具体的に学べる

本書では、ロジックを整理する技術として「MECE」「So What?/Why So?」の二つが取り上げられています。

「MECE(ミーシー)」とは項目を「重複・漏れ・ずれ」なく並べたもののことです。

○「MECE」の例
・18歳未満、18歳以上65歳未満、65歳以上
・仏教、キリスト教、イスラム教(世界三大宗教)
・糖質、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミン(五大栄養素)

一方、「So What?/Why So?」は結論の抽出と根拠の展開を並べたものを指します。
「So What?」が結論の抽出(そこから何が言える?)で、「Why So?」が根拠の展開(なぜそう言い切れる?)です。
「So What?/Why So?」は、いつも相互に成立する必要があります。

○「So What?/Why So?」の例
a.18歳未満、18歳以上65歳未満、65歳以上の各層で、すでに自社の知名度が80%以上もある
b.知名度アップのために、これ以上宣伝を強化する必要性はない
・「So What?」⇒「a」だから「b」だと言える
・「Why So?」⇒「b」と言い切れるのは「a」だから

「MECE」や「So What?/Why So?」は概要を理解するのは簡単ですが、抽象度が高いので実際に使ってみると意外と分からないことが出てきます。
たとえば「MECE」なら、項目をいくつに分けるべきなのか、細かく分けるほど良いのか、といった疑問が生じるかもしれません。

そのため、本書では現実のシチュエーションを基に作成した、具体例と練習問題を豊富に用意しています。

「MECE」や「So What?/Why So?」は、回数を重ねなければ使いこなせない技術です。
使い始めた直後に挫折することのないように工夫されているのが、本書の特徴といえます。

WEBライティング等の構成を練るのに役立つ

筆者が本書に出会ったのは、本記事を執筆する5年前にさかのぼります。
当時はまだ仕事でもWEBライティングとは無縁で、まったく別の目的で本書を買いました。

ですが、WEBライティングを始めたときに強く思い出されたのが本書の内容でした。
本書の内容が、まさにWEBライティングの本質と重なって見えたからです。

どのようなタイプの文章を書く場合でも、相手が理解しやすいようなロジックを構築しなければならないのは同じです。
ただし、WEBライティングの場合は、話の結論を端的に相手に伝える工夫も求められます。

そのため、「起承転結」や「序論・本論・結論」のような結論を後回しにするロジックは、WEBライティングに不向きでした。
そこで本書の内容を試しに用いてみたところ、見事に適合しました。

ですから、筆者が仕事で書いたWEBライティングの記事は、そのほとんどが本書の内容に沿って構成されています。
その他のビジネス文書を作るときも、本書の内容を参考にしています。

なお、誤解を生じないように1点補足しておくと、本書は決して「結論を先に書け」と論じているわけではありません。
相手に伝える順序等は、ロジックと別の問題だからです。

狙った成果を生み出せるようになることが本書の目的であり、ロジックの構築は手段に過ぎないのです。

まとめ

照屋華子・岡田恵子著『ロジカル・シンキング』の裏表紙

照屋華子・岡田恵子著『ロジカル・シンキング』の裏表紙。

この記事では、照屋華子先生・岡田恵子先生の共同著書、『ロジカル・シンキング』を取り上げました。

本書の内容はビジネスのみならず、あらゆるシチュエーションで役立ちます。
筆者もWEBライティング等において本書を参考にしています。

なお、本書は「MECE」や「So What?/Why So?」程度しか難しいカタカナ語や英略字が出てこないため、完読するのも簡単です。ぜひご一読ください。

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