この記事では、「痘痕も靨」(あばたもえくぼ)を取り上げます。
「痘痕も靨」は、漢字検定や日本語検定などで出題される可能性があります。
使われている漢字は難しめですが、日常でも使われることが考えられる言葉です。
そこで、このことわざについて、言葉の意味や使われている単語と漢字を詳細に解説いたします。
「痘痕も靨」の意味
好きになった相手なら、短所でさえも長所に見えてしまうものだという意味です。
主に、恋愛における心理状態を表す言葉として使われます。
彼女はお喋りで騒がしい人だ。しかし、彼氏には、彼女が周囲を元気づけているように見えるらしい。痘痕も靨とは、まさにこのことだ。
ハロー(後光)効果とは、一部分の評価が全体の評価となってしまうことを指す心理学用語です。具体的には、「成績が良いから素行も良いだろう」「身だしなみがなっていないから仕事もできないだろう」などと人を一面だけで推し量ってしまうことが挙げられます。
ハロー効果のなかでも高評価につながるものをポジティブ・ハロー効果といい、日本では「あばたもえくぼ効果」とも呼びます。
「痘痕も靨」の類義語
- 惚れた欲目(よくめ)
- 愛は屋烏(おくう)に及ぶ
- 屋烏の愛
「痘痕も靨」の対義語
- 坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い
「痘痕も靨」に使われている単語と漢字
「痘痕(あばた)」の解説
「痘痕(あばた)」とは、天然痘が治った後に皮膚に残る、ブツブツとした小さなくぼみのことを指します。
「痘痕も靨」では、人の短所を醜い「痘痕」に例えています。
天然痘は、感染症の一種です。「疱瘡(ほうそう)」「痘瘡(とうそう)」とも呼ばれます。
感染すると高熱を発し、顔面に豆粒のような発疹が出ます。その発疹の跡が「痘痕」です。
かつては感染力が強くて致死率も高い病でしたが、現在はワクチンの普及により絶滅したとされています。
「あばた」の語源・由来
「あばた」は、梵語(サンスクリット)でかさぶたを意味する「arbuda(アルブダ)」に由来します。
漢字「痘」の成り立ち
「痘」(トウ)の部首はやまいだれ、画数は12画。会意兼形声文字で「やまいだれ(病気を表す意符)+[音符:トウ]豆(=逗。じっととどまり、あとを残す)」から成り立ちます。
また、「痘」は表外読みで「もがさ」とも読みます。「疱瘡」「痘瘡」とも書いた場合も、同様に「もがさ」と読むことが可能です。
「豆」は食器のたかつきを描いた象形文字です。一か所にじっと立つといった意味があります。
なお、食べ物の「マメ」に「豆」の字が当てられるようになったのは、マメの形がたかつきと似ていたためです。
⇒痘(皮膚にあとが残る病)
漢字「痕」の成り立ち
「痕」(コン)の部首はやまいだれ、画数は11画。会意兼形声文字で「やまいだれ(病気を表す意符)+[音符:コン]艮(一所にあって動かない)」から成り立ちます。
「艮」(ゴン・コン)は「目+匕(小刀)」で、小刀で目のまわりに(いつまでもとれない)入れ墨をすること等を表します。「根」(動かない根)、「限」(動かない境界)、「恨」(残りつづける恨み)にも含まれます。
⇒痕(残りつづける傷跡)
「靨(えくぼ)」の解説
「靨(えくぼ)」とは、笑った際に頬(ほお)にできる小さなくぼみのことを指します。
「痘痕も靨」では、人の長所を可愛らしい「靨」に例えています。
なお、「えくぼ」は漢字で「笑窪」とも書きますが、一般的に「痘痕も笑窪」と表記することはありません。
「えくぼ」の語源・由来
「え(笑)+くぼ(窪)」から成ります。古くは「ゑくぼ」と表記していました。
漢字「靨」の成り立ち
「靨」(ヨウ)の部首は面、画数は23画。会意兼形声文字で「面(かお)+[音符:エン・ヨウ]厭(抑えつける、くぼむ)」から成り立っています。笑ったときに頬に現れる顔面のくぼみを意味します。
「厭」(エン・ヨウ)の部首は厂(がんだれ)、画数は14画。会意文字です。
「厂」を除いた部分は脂肪の多い肉を表し、食べ飽きて嫌になるといった意味を持ちます。そこに「厂」(がけや上を意味する)を加え、上から抑えつけられる、飽きて嫌になる等の意味になります。
そのため、日本では「厭」を「あきる」「いや」「いとう」と訓読みするようになりました。
なお、「厭+土」から成る「壓」は、「圧」の旧字体です。「圧」は土を被せて抑えつけるという意味なので、上から抑えつける「厭」の意味がそのまま受け継がれて残っています。
厭+面(かお)⇒靨(笑顔でくぼむ部分)
まとめ
「痘痕も靨」は、漢字検定1級や日本語検定1級で出題されるかもしれない言葉です。
漢字は難しめですが、日常でも使う機会は十分にあります。
表現豊かな文章を書きたいのでしたら、ぜひとも知っておきたい言葉といえます。
この記事が、皆様の記憶の定着に役立てば幸いです。