この記事では、「禍福は糾える縄の如し」(かふくはあざなえるなわのごとし)を取り上げます。
「禍福は糾える縄の如し」は、漢字検定や日本語検定などでも出題される可能性があります。
そこで、この故事成語について、言葉の意味や使われている単語を詳細に解説いたします。
「禍福は糾える縄の如し」の意味
災いと幸せとは表裏一体であり、ぐるぐると交互にやってくるものという意味です。
不幸と幸福が入れ替わっていくさまを、より合わせてできた一本の縄に例えた故事成語です。
↓
(禍)自転車で事故を起こし、入院した
↓
(福)入院先で偶然起業のプロと出会い、退院後に起業した
↓
(禍)起業に失敗し、借金が残った
「禍福は糾える縄の如し」の出典
出典は『史記』南越伝です。
『史記』とは、前漢時代に司馬遷(しばせん、前145?~前86?)の手によって編纂された、中国の歴史書のことです。
「禍福は糾える縄の如し」の類義語
- 人間万事(ばんじ)塞翁(さいおう)が馬
「禍福は糾える縄の如し」に使われている単語
「禍福」の解説
「禍福(かふく)」とは、災い(禍)と幸せ(福)という反対の意味を持つ漢字を組み合わせた熟語です。
表外読みとして、「禍い」は「わざわい」、「禍々しい」は「まがまがしい」と読みます。
同じく、「福い」は「さいわい」と読むことが可能です。
漢字「禍」の成り立ち
「禍」(カ)の部首は示(しめすへん)、画数は13画。会意兼形声文字で「示(祭壇)+[音符:カイ・カ]咼(丸くくぼんだ穴)」から成り立ちます。
神のたたりによって、思わぬ落とし穴にはまる不幸を意味します。
「咼」(カイ・カ)の部首は口、画数は9画。会意兼形声文字。
口を除いた部分(「骨」の上部と共通する部分)は、丸い穴のあいた骨と、下から丸い穴にはまり込む骨を描いた象形文字です。のちに「口」を加えて「咼」となりました。
「まるい」「まるく回る」「まるくくぼんだ穴(「禍」では落とし穴)」といった意味を含みます。
漢字「福」の成り立ち
「福」(フク)の部首は示(しめすへん)、画数は13画。会意兼形声文字で、神の恵みが豊かなことを意味します。
右側の旁(音符:フク)は、酒をいっぱいになるまで満たした、徳利(とっくり)状の器を描いた象形文字です。「富」の字などにも含まれています。
「糾(あざな)える」の解説
「糾(あざな)える」とは、縄を綯(な)うことです。
厳密には、二つのものを一つに、より合わせることを意味します。
この故事成語では、「災い(禍)と幸せ(福)が交互に現れるように、より合わせて作られた(一本の縄)」といった意味で使われています。
「糾(あざな)える」の語源・由来
古語では「あざなへる」と表記します。
動詞「あざなふ」(ハ行四段活用)の已然形または命令形+完了・存続の助動詞「り」(ラ行変格活用)の連体形で構成されます。
⇒あざなへ(已然形)+り(終止形)
⇒あざなへ(已然形)+る(連体形)+縄(体言)
「あざなふ」の語源には、複数の説が存在します。
『和訓栞(わくんのしおり)』などでは、「あざ」を「交わる、交差」の意とし、正倉院に使われている建築技法「校倉(あぜくら)」の「あぜ(交ぜ)」と同じだとしています。
「なふ」については「縄やひもを綯(な)う」の意とし、「あざなへる」で「二本の縄やひもを交差させながら綯う」という意味となると考えます。
ただし、「なふ」を「あきな(商)ふ」「あがな(購)ふ」と同じ接尾辞と捉える説もあります。(『小学館古語大辞典』など)
漢字「糾」の成り立ち
「糾」(キュウ)の部首は糸、画数は9画。会意兼形声文字。ひもをより合わせて一本にすることを意味します。
右側の旁(音符:キュウ)は「糾」の原字で、二本のひもをよじるさまを描いた象形文字です。「口」を付けると、金切り声でさけぶことを意味する「叫」となります。
なお、「糾」は「紛糾」(よじれて乱れる)のように「よじれる」、「糾問」(といただす)のように「ただす」といった意味でも使われます。
「糾」の右側の旁は、「左の縦棒→横棒→右の縦棒」の順で書きます。(標準字体の場合)
まとめ
「禍福は糾える縄の如し」は、漢字検定1級や日本語検定1級で出題される可能性がある故事成語です。
ご年配の方々が、会話のなかでお使いになるケースも少なくありません。
社会人の教養として、ぜひとも押さえておきたい言葉の一つです。